この声は届くか

スマホの音声入力でどこまでブログが書けるのかの実験としてはじめます。途中で変わるかもしれません。

インプロビゼーション

ギターを弾くようになって、ずいぶん長くなります。若い頃にはライブハウスの飛び入りなんかでステージに立ったりしてました。いろいろ持ちネタはあったけれど、オリジナルの歌がメインでした。そして、割と自分で楽しみにしていたのは即興演奏でした。

観客席からでお題をいただいて、その場で一曲作りながら歌うんです。あるいは、自分で最初からこのお題って決めてあがることもありました。これがなかなか面白い。出任せみたいに次から次へと、出てくるままに歌うんですね。そうやって歌った曲が後々残ってまた自分の持ちネタになることもありました。
オリジナル曲をつくるのは割と面倒くさいんです。「ようし、曲をつくるぞ」みたいな感じでつくり始めても、なかなか一曲通してつくることはできない。ところがステージの上で観客を前にして歌い始めると、歌い続けないわけにいかない。当然、歌い終わらないわけにいかない。ですから、無理矢理にでも、とにかく形をつけていく。そういうふうに、一曲が3分間の間に出来あがっちゃうんですね。そして、そうやってつくりあげた曲は、けっこう悪くないんです。即興というものは意外と、自分の持てる力を引き出してくれるんだな、というふうに思えます。

弾き語りだけでなく、ギター演奏でもそうです。バンドで、ちょっとジャムセッションをやろうかみたいなときに弾くフレーズって、即興です。アドリブという言い方がよく使われますけど、インプロビゼーションともいいます。即興演奏では、こんなふうにやろう、あんなふうにやろうという思いがないわけじゃないですけれども、ある程度まで曲が進むともう、流れに身を任せてっていう感じになるわけです。そして、自分の中から自分の持っているものが自然に出てくる。隠されたものを引き出してくれる力が即興演奏、インプロビゼーションにはあるんだと思います。

こうやって音声入力でブログを書くのも、ある程度、即興の力を借りよう、ということなんですね。ブログを書くとき、キーボードを前にしてじっくりと文章を練っていくと、やっぱり筆が進まない。ここはこういうことを先に書いた方がいいかな、いやそこはこうしたほうがいいかな──みたいに、頭の中でいろいろいろいろ考えながら書いていく。この文は長すぎるぞ、ここは短かすぎるぞ、ここはこんな言い回しがいいぞ、ここはもっと気の利いた表現があるんじゃないか──そういうふうに考え始めてしまいます。もちろんそうやって考えることによって良いものができていくんだけど、同時にスピードが落ちる。そして、自分の中にあるものがどんどんどんどんしぼんでいく。そういう危険性も持ってるわけです。
音声入力はステージの上に立ってるのと同じで、とにかく進めなければいけない。止まっちゃいけない。無理にでも進まないといけない。だから頭に浮かんでくるものをどんどんどんどん出していかないといけない。そうやって、無理にでも形が付いていく。それも決して悪くないんじゃないかなと思うんです。

家庭教師として子どもたちに教えてるときにも、実はそういうことが起こります。子どもたちを前に説明するときは、あらかじめこちらの方でこういうことを伝えおこう、こういうことを言おう、こういう教え方をしようなんて思ったことは、ほとんど通用しないわけです。相手があってのことなので、自分の都合だけでは進まないのですね。相手を見ながら、ここはこうしようか、あそこはそうしよう、ここはこうだ、というふうに、その場で思いつく限りのことを繰り出していきます。そして時に自分の中から思いもかけなかった表現、思いもかけなかった比喩、思いもかけなかった論理が出てきます。自分で喋りながら、「これはそういうことになってんだ!」って自分で納得することさえあります。

子どもに対して即興で教えていくのは、自分自身にとってずいぶん修行になります。同じようなことが、この音声入力を利用したブログでも起こるんじゃないかと期待しています。